米民歴:1年
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米津玄師「アイネクライネ」歌詞全文
作詞・作曲・MV・歌手 米津玄師
あたしあなたに会えて本当に嬉しいのに
当たり前のようにそれらすべてが悲しいんだ
今痛いくらい幸せな思い出が
いつか来るお別れを育てて歩く誰かの居場所を奪い生きるくらいならばもう
あたしは石ころにでもなれたならいいな
だとしたら勘違いも戸惑いもない
そうやってあなたまでも知らないままであなたにあたしの思いが全部伝わってほしいのに
誰にも言えない秘密があって嘘をついてしまうのだ
あなたが思えば思うよりいくつもあたしは意気地ないのに
どうして消えない悲しみも綻びもあなたといれば
それでよかったねと笑えるのがどんなに嬉しいか
目の前の全てがぼやけては溶けてゆくような
奇跡であふれて足りないや
あたしの名前を呼んでくれたあなたが居場所を失くし彷徨うくらいならばもう
誰かが身代わりになればなんて思うんだ
今 細やかで確かな見ないふり
きっと繰り返しながら笑い合うんだ何度誓っても何度祈っても惨憺たる夢を見る
小さな歪みがいつかあなたを呑んでなくしてしまうような
あなたが思えば思うより大げさにあたしは不甲斐ないのに
どうしてお願い いつまでもいつまでも超えられない夜を
超えようと手をつなぐこの日々が続きますように
閉じた瞼さえ鮮やかに彩るために
そのために何ができるかな
あなたの名前を呼んでいいかな産まれてきたその瞬間にあたし
「消えてしまいたい」って泣き喚いたんだ
それからずっと探していたんだ
いつか出会える あなたのことを消えない悲しみも綻びもあなたといれば
それでよかったねと笑えるのがどんなに嬉しいか
目の前の全てがぼやけては溶けてゆくような
奇跡であふれて足りないや
あたしの名前を呼んでくれたあなたの名前を呼んでいいかな
米津玄師「アイネクライネ」の誕生背景
『アイネクライネ』は、2014年4月23日にリリースされた、米津玄師さんのセカンドアルバム『YANKEE』に収録されている楽曲です。
シングルカットされていないにもかかわらず、米津玄師さんの楽曲の中でも、とても支持されている楽曲になっています。
『アイネクライネ』については、MVを見ることなしには何も語れない楽曲です。
全編に渡って、繊細なタッチのイラストで構成されたアニメーション作品になっているMVは、企画・イラスト・編集など、すべてが米津玄師さんが手がけているものです。
2019年6月4日時点で、MVの再生回数は2億回を超えました。
また、東京メトロの2014年の広告キャンペーンにも起用されました。
MVは、一つの作品として、ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2014の、ミュージックShort部門シネマチックアワードにノミネートされ、ブリリアンショートショートシアター・横浜で上映もされました。
『アイネクライネ』は、楽曲とビジュアルの両面からアプローチしている作品になっており、米津玄師さんの楽曲の中でも、とても注目度の高い作品になっています。
米津玄師「アイネクライネ」のタイトルの意味
『アイネクライネ』と聞いて、その意味について直ぐに思いつく方は少ないでしょう。
意味がわからなくても、何処か響きにニュアンスがあり、惹かれるタイトルになっています。
アイネクライネ=Eine Kline=a small
『アイネクライネ』はドイツ語であり、英語でいうと「a small」、日本語だと「小さな」という形容詞になります。
形容詞のみで、小さな「何」なのか、明示されていません。
米津玄師さんは意識的に、特定の固有名詞を出さずに、「小さな何なのか?」について、限定することを敢えて避けています。
そこに、タイトルの『アイネクライネ』の持つ意義が感じ取れます。
米津玄師「アイネクライネ」のストーリー展開
「どうして、私は、この世界に生まれて来てしまったの?」
どうして?
どうして?
何度、問いかけたかわからないくらいに、私は、何度でも問い続けてしまう。
絶望という名の中でしか生きて来なかった私が、あなたという、たった一つの希望に出会ってしまった。
私には、誰にも言えないことがある。
私、あなたを失わずに済むために、どんなことでもしてしまいそうで、怖い。
やっぱり私は、路傍の石のように、取るに足りないものとして存在するべきだと思う。
でも、私の心は、あなたと一緒に居たいって、叫んでいる。
「あなたが差し延べてくれた、そのあたたかい手を、私は受け取ってもいいの?」
私が言葉に出来ずに、ただ、あなたを見つめていると、あなたも言葉に出さずに、うん、と頷いてくれた。
私はもう、「どうして?」と、心の中で叫ばなくていいんんだね?
私にこんなコトが起きるなんて、信じられない。
喜びと同時に、あなたを失う恐怖がつきまとう。
お願い。
お願い。
私は、「どうして?」の代わりに、「お願い」と、今度は心の叫びが変わってしまった。
あなただけは失いたくない。
あなたは、私が言葉にしなくても、わかってくれていた。
絶望しか知らなかった私に、あなたというキセキが、舞い降りてくれた。
米津玄師「アイネクライネ」の歌詞の意味・考察・解釈
『アイネクライネ』の歌詞は、切なすぎるほど切ないものです。
歌詞に込められている意味について、考えてみましょう。
限定されない世界
『アイネクライネ』が「小さな」と、形容詞のみのタイトルになっているのは、歌詞を読む人、ひとりひとりが抱えているものによって受け取り方が変わることを想って、米津玄師さんは敢えて物語の設定を限定していません。
「あたし」や「あなた」は、人の数だけのバリエーションがあり、ストーリーも同じくらいの数の、個々の物語があります。
米津玄師さんは楽曲を制作する上で、聴いてくれる方に寄り添うことが出来る楽曲制作になることを、いつも心がけています。
リスナーが抱えているバックグラウンドに合わせて、共感出来る楽曲に『アイネクライネ』はなっているのです。
限りない絶望から希望への道を描いた楽曲
産まれてきたその瞬間にあたし
「消えてしまいたい」って泣き喚いたんだ
歌詞のこの部分から、この物語の主人公が、想像を絶する、物凄くひどく辛い経験をしていることがわかります。
きっと、死の淵を、おぼつかない足取りで生きてきたことでしょう。
どうして
歌詞のこの部分を、米津玄師さんは「どうして、どうして、どうして」と強調して歌っています。
如何に深い絶望であるかが伝わり、胸に迫ってくるものがあります。
いつ死に転落してもおかしくない状況の中で、生きて来なければならない事情があったところに、一人の信頼出来る人と出会うことが出来て、生きていく希望を持てたのです。
米津玄師さんは、『アイネクライネ』のMVが1億再生を記録した記念として、2018年3月29日のツイッターで、MVに出てくる女の子が笑顔で幸せそうにしているイラストを描いています。
主人公は、絶望と死の淵から、信頼出来る人との出会いによって、奇跡的に人生の幸福を取り戻すことが出来たのです。